メモリーズ
寒くなってきました。
こんな時は温かい飲み物と共に、素敵な音楽を聴いていたいと思いますが、聴き慣れた音楽にはそれぞれ思い出もよみがえって来ます。
忘れる事が出来ないような「時」にかかっていたその曲には、自分の人格を整えるために必要な、痛みや恐怖の想いも含まれます。
ずっと昔、新しい車が家にやって来て間もなくのことでした。
生まれて初めてのターボ車で、それまでは、自然吸気エンジンの車しか運転したことが有りませんでした。
イグニッションスイッチ回し、足の親指の付け根でそっとアクセルを踏むと気分よく滑らかに発進しました。
「随分軽いな」と感じながらも、「いつもと同じで良いのだ」と思い、誰も走っていないのを確認してから思いきり踏みました。
いきなり加速してしまい、あまりの加速の衝撃で死ぬかと思いました。
それから恐ろしくて、一か月ほど車に乗ることが出来ませんでした。
ターボが何なのかもよく分かっていなかった、若いころの苦い思い出です。
それでもやがて運転が少し楽しくなった頃、夜になって車が空いてから走る事にしました。
高速道路に何度も通うようになっていました。
そしてある夜スポーツモードで加速しようとすると、トランスミッションの付近から、お地蔵さまが飛び出て来ました。
それから不動明王にそっくりな方に、「夜十時過ぎに、一人でここを通るな!!」と怒鳴られました。
その間ずっと私は前方を確認していましたが、もう一人の私がそこにいて、仏のお叱りを受けていたようです。
その手の感触も声も、まだ明確に覚えています。
後で聞いた話ですが、そのあたりは自殺で有名な所だったようです。
恐らくそのあたりには(色々と恐ろしくて確認しておりませんが)、不動明王の像か何かが祀られていたのでしょう。
人は何も知らないで、やりたいことをしようとするのですが、神仏はいつも、天を心に描いている私たちを見ていて下さるのだと思います。
あの未熟なドライバーだった私は、加速することが楽しくなり始めていました。
それでもその様な私には、きっといつか絶望の入り口に入ってゆくような、危うさがあったと思います。
今でもあの時聴いていた「アヴェ・マリア」と、未熟な私を思い出します。
その思い出が、私の運転を今でも戒め続けています。
これから路面の厳しい季節を迎えます。
皆様もどうぞ心を守って、魔物の誘いに乗らず美しい春を迎えましょう。
画像は「宇宙船のような雲」です。
今日のフィーリングは、東京レディース・シンガーズ、東輝子ピアノ演奏の「アヴェ・マリア」、Maroon5 マルーン5の「Memories メモリーズ」、Muse ミューズの The 2nd Law : Isolated System ザ・セカンド・ロウ:アイソレイテッド・システム」かな